こんにちは。島田です。
バレエを踊っていて、ターンアウトは、すべてにつながる重要な動きです。
でも、大事だとは知りつつも、なぜそんなに重要なのか、どんな種類があるのか、どこを使うのか、何が NGなのか、って気になることありませんか?
そこで、今回はターンアウトについて、意味や使う関節、筋肉などの解剖学的な話も含めて徹底解説します。
目次
ターンアウトって?意味は?【バレエ用語】
バレエ教室では「ターンアウトもっと開いて!」とか「ターンアウトが足りない」とか、いろいろなアドバイスをされると思います。『股関節周りの動きで、足開いてることなんだろうな〜』と何となくイメージしているかもしれません。
一応本に書かれている定義をみると…
ターンアウト:足の付け根から両足を外側に開くこと
どのポジションでも、両足を開ける度合いは太ももが腰(足の付け根の部分)からどのくらい外側に開くかによって決まる。引用元 『ステップ・バイ・ステップ バレエ・クラス』ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンシング編
つまり、ターンアウトってこんな状態です。
・両方の脚を外に開くこと
・開いたときに、膝の向きとつま先が同じ方向になってる
このときにNGなパターンは、
・足だけが真横に開かれている
・足先が膝より後ろある(つま先は横なのに、膝が前を向いてる)
状態です。
あとでお話しますが、無理してNGなパターンやると膝のケガにつながります。
ターンアウトするメリット
「そもそもなんでターンアウトなんてやるの?」と思うかもしれません。
これ見た目だけのことじゃなくて、ターンアウトすることでメリットがあるからなんです。
①可動域が増える
足がいろんな方向に高くできるのはターンアウトがあるからです。
②動ける範囲が増える
ターンアウトしておくことで、どの方向にもスムーズに移動できます。
③体がブレない(安定する)
お互いに引っ張り合う力が働くので、軸がブレません。
④ケガを防ぐ(安全性)
きちんとしたターンアウトができてるとケガや痛みを防げます(逆もしかり…)。
⑤長くてほっそりした筋肉にしていく
ターンアウトしていくと、筋肉が変わってプロポーションが変わってきます(縦に伸びるようになる)。うまくいかないと下半身が太くなります^^;
アンディオールとの違い
先生によって『アンディオール』と言ったり『ターンアウト』と言ったり、表現が違うことがあります。
「え?どっち?^^;」って思ったことありませんか?
細かい話ですが、一応違いをいうと
ターンアウト:足を開いた状態そのものをいう
アンディオール:足を開いてる最中の動きをいう(←開いてるように見えなくても)
『足を開いてる最中』ってイメージしづらいかもしれません。
例えば、足がパラレル(つま先がまっすぐ)だったとしても、股関節を外に開く力がはいっていればアンディオールしてるってことになります。
バレエ教室で注意されるときは、どちらも同じことを言ってることが多いです(多くの場合はアンディオールのこと)。
ターンアウトの種類(足のポジション)
バレエには、足のポジションに番号があります(1番〜5番、ポアント履くときは6番も)。ポジションに合わせてターンアウトでの開き方が変わります。
1番ポジション
かかとを合わせて外側に向けた左右のつま先をできるだけ遠くにする
2番ポジション
左右に開いた両足の間隔は、足の大きさ(※)の1.5倍くらい。
※足の大きさ:靴のサイズくらい。あなたの足が23cmならそのくらいが目安です。
3番ポジション
片方のかかとが、もう一方の足の甲(土踏まず)にくる。
今のバレエ教室では、省略されることが多いです。ただ、このポジションは腹斜筋(ふくしゃきん・斜めの腹筋)や足の甲の伸びとも関係があります。
大人から始めた方の場合、レッスン前に3番を通すようにしておくと、4番ポジション以降で軸を集めやすくすることができます。
4番ポジション
体を中心に置いて、前後に開くポジションです。
・前に出したかかとと、後ろの甲が向かい合う(前後に開いた3番・オープントー)
・前に出したかかとと、後ろの足のつま先が向かい合う(前後に開いた5番・クローズトー)
どちらも体重を両足平等にかける前後に開いた両足の間隔は足の大きさ(※)くらい。
5番ポジション
片方の足のかかとが、もう一方の足のつま先の横にくる。
このポジションは、股関節の動き(内旋・内転・外旋・外転・屈曲・伸展)をすべて駆使して行われます。ただ回すだけだと、頑張っても膝が伸びないので、膝がねじれてケガの原因に。
ターンアウトの難易度は、番号が上がるほど難しくなります。
番号順で開いていくことで、股関節に無理をかけずに踊りに必要な体の状態にできるんですね。
この順番を、省略したり無理に開こうとすると…、膝が曲がったり、膝の痛みを起こすことに^^;
ターンアウトで使う関節は?
足の付け根(股関節)を回す印象が強いですよね。
もちろん、股関節は使います。
でも、いきなり開こうとすると、お尻の大きい筋肉が先に動いてしまいます。小さい筋肉や奥の筋肉を使って股関節を開くことができません。
なので、股関節をイメージ通りに開くために、他の関節のサポートも使いながら行います。
ターンアウトするときに使う関節は、大きく2つに分けることができます。
①付け根から回すための関節
②①をやりやすくするための関節
①付け根から回すための関節
(1)股関節(こかんせつ)
骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と、大腿骨頭(だいたいこっとう)でできる関節です。
寛骨は骨盤の横にある部分で腸骨(ちょうこつ)・坐骨(ざこつ)・恥骨(ちこつ)でできてます。大腿骨頭がおさまるソケットの役割をします。
もしかしたら、バレエ教室で「ソケットが…」と聞いたことがあるかもしれません。ターンアウトでメインで回るのはこの股関節です。
骨格的に、股関節に問題があってターンアウトが開かない場合もありますが、そう多くありません。(参照:ターンアウトは骨格関係ある?2つの指標)
(2)膝関節(ひざかんせつ)
曲げ伸ばしはできますが、ねじれはあまりできません。
なので足先だけターンアウトして、膝がねじれるような状態を続けていると、靭帯をケガしやすいです。最悪、ちょっと踊るだけで膝が腫れるようになります^^;
(3)足関節(そっかんせつ)
足首の関節は、ターンアウトで股関節を開く分をサポートするために使います。(特に5番で)
あくまで補助なので、こっちを先に横に向けると、足先は横に向いてるけど、股関節は回っていない(膝のお皿は前)なんちゃってターンアウトになりがちです。
ちなみに、足首をフレックスしながら回すと、股関節が回りやすいです。
②①をやりやすくするための関節
足を付け根から回しす(股関節を開く)ためには、体のバランスを支えるところがしっかりしてないとお尻に力が入ったり、膝がねじれて開けません。
股関節を開きやすくするためにも、この3つは押さえていきたいです。
(1)仙腸関節(せんちょうかんせつ)
骨盤にある関節。骨盤の後ろにある仙骨(せんこつ)と骨盤の横にある腸骨(ちょうこつ)をつないでいます。
股関節は骨盤につくので、ここがズレてたりすると股関節の開きに左右差がでてきます。逆に、骨盤を水平にキープすることでターンアウトをサポートしてくれます。(参照:ターンアウトを助けるズレない骨盤)
(2)肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)
肋骨と肩甲骨をつなぐ部分。肩のイメージがありますが、体幹と腕をつないでバランスを取りやすくしてくれています。
ここが働かないと、引き上げがしづらくなります。 引き上げできないと、ターンアウトするときにお尻が後ろにいっちゃうので開きづらくなります。
(3)椎間関節(ついかんかんせつ)
首〜お尻まで背骨をつなぐ関節。いわゆる背骨です。
反り腰だったり、猫背や首を丸めたりすると、股関節開きづらくなります。
ターンアウトでよくある悩み
けっこう多いのが『足先が外に向いてればOKじゃない?』的な感じでターンアウトしちゃうケース^^;
でもそうすると、ターンアウトするときに使う関節でお話した通り、股関節を開くのに使う筋肉に力が入らなかったり、膝に無理な負担がかかります。
ターンアウトでよくある悩みワースト3はこんな感じです。
悩み1:股関節が硬い
「股関節が硬くて開かない」という悩みは多いです。
でも、あなたが階段の上り下りを普通にできるレベルなら…、ご安心ください。
骨の問題であるケースはほぼありません。
これは骨格の問題ではなく、力の入れかたの問題です。
これは股関節を開こうと表にある大きい筋肉を一生懸命つかっていることで、ブレーキをかけながら開こうとしている結果です。
なので、使う位置さえ直していけば、開くようになります。
(参照:バレエで股関節が硬い4つの原因とレッスンでできる対策)
悩み2:膝が曲がる
ターンアウトするときに膝が曲がっちゃったり、ポーズで片足になると膝が曲がるってことありませんか?
これは股関節が回せずに、足先のターンアウトをしてるとなりやすいです。
実は、脚の力だけを使って膝を伸ばしたまま足を開けるのは片足45度くらい。これが普通です。硬いわけではありません。それ以上開こうとすると、構造的に無理がかかるので、膝裏が硬くなって膝が曲がってきます。
膝を伸ばしたまま股関節を回そうと思ったら、背中も伸ばさないとできません。
なので、ターンアウトするときには、引き上げという、体を伸ばしたまま股関節を開く技があるんですね。
それをせずに、無理して膝を押し込んで伸ばすと、膝の靭帯(じんたい)を痛めます。
悩み3:膝が痛い
ターンアウトで使う関節でお話した通り、膝の関節って曲げ伸ばしはできるんですけど、ねじりはできません。
膝のお皿の向きと、つま先の向いてる方向がズレてるときは、要注意です。
ターンアウトの正しいやり方・方法
「じゃ、正しいターンアウトのやり方は?」って気になりますよね。
開いたときに、骨盤のすぐ下の大腿骨と膝と足首とつま先が外向きになるように、脚全体(骨盤〜つま先)を一まとまりに回旋する。
引用元:インサイド・バレエテクニック
このとき、太もも裏(お尻の下で内側あたり)が前に出るように股関節を開くと、きれいに回りやすいです。
注意ポイント①お尻や腰が後ろや前に行かない
お尻が後ろにいくと、骨盤が後傾してしまうので、ターンアウトしたときに、小さい筋肉を使うことができず、膝が曲がります。
腰が前にいくと、反り腰のようになるため、膝が後ろに押し出されます。もも裏の筋肉が使えないので、前ももに力はいり、膝裏が伸びません。
体全体が縦(上下)に伸びる方が、股関節が使いやすく開きやすいです。
注意ポイント②足だけで開くと膝が危険
足を先に回してしまうと、肝心の股関節が開かず、インに入ります。
こうすると、O脚や膝を痛める原因になります。
こうなってるときは、膝の向きとつま先がズレてる(足は横に向いてるのに膝はまっすぐ)ので、鏡でチェックしてください。
ターンアウトするときのコツ
では、ターンアウトするときは、まずどんなところから意識するといいのか?
簡単にできるコツを2つお話します。
①太ももを先に回す
太ももを先に回す意識をすることで、足先のなんちゃってターンアウトを防ぐことができます。太ももに力を入れろってことじゃありませんよ^^;
太ももを回す→回ってない分を足首でカバー
どのくらい開くかは片脚60度(両モモで120度)くらいを目標にするのがいいです。(←最初は両モモ90度で十分。レッスンを重ねていくうちに開いていきます。)
この60度って数字はどこから出てきたのか、以下の引用元を参照ください。
180度のターンアウトを目指すなら、1つ目安になるかと。
180度のターンアウトを達成するには、両フトモモを60度から70度ずつ外旋し、残りを脚の下部、おもに足関節で補うのが理想的。
(プロのダンサーでも片脚70度ターンアウトできる人は少ない)引用元:THE DANCER AS ATHLETE
②先に内側に回してからターンアウト
これは、内旋筋をストレッチして股関節を外旋しやすくする方法です。
股関節で回す感覚がいまいちつかみづらい…と思ったら試してみてください。
①肩幅に足を開く
足をパラレル(つま先を前に向けた状態)で肩幅にします。
↓
②つま先を内側に向ける
つま先を内側に向けます。ここで行なっているのは、股関節を外旋する筋肉をストレッチして回しやすくする前フリです。
↓
③そこからターンアウト
そこからターンアウトで足を外に回して股関節を開いていきます。
このとき、両方のかかとがつくように回すとターンアウトがきれいに入りやすいです。
ターンアウトで使う筋肉
ターンアウトするときは、股関節を開きます。
解剖学でいうと、外旋(がいせん)という股関節を外回しする動きです。
実際は、内転筋など他の筋肉との共同作業で開きます。(参照:ターンアウトするときの内転筋の役割は?)
ここでは、股関節を外旋する筋肉についてお話します。
股関節を開く筋肉は、表にある大きい筋肉と奥にある小さい筋肉に分かれます。
股関節を開く大きい筋肉
股関節を開く筋肉で大きいものは、3つのカテゴリーがあります。
①お尻 :大殿筋(だいでんきん)・中殿筋(ちゅうでんきん)
②腰 :腸腰筋(ちょうようきん)
③前もも:縫工筋(ほうこうきん)
体を支える筋肉が多いので、ここをメインに股関節を開こうとすると可動域は減ります。
なので、ターンアウトするために股関節を開くなら、後でお話する深層外旋六筋を使わせることが多いです。
では、この大きい筋肉はターンアウトに関係ないのか、というとそうでもありません。
それぞれがターンアウトとどう関係するのか、特徴を簡単に説明すると…、
・大殿筋(大臀筋)
脊柱起立筋などの体幹を支える筋肉とつながる。股関節を伸ばして骨盤と太ももを一直線にする。
⇒1番〜5番までポジションを上げて股関節を回すときに、股関節が回しやすくなる。
・中殿筋(中臀筋)
2番ポジションで骨盤を支えるときに使う。
⇒骨盤のズレを防ぐ。
・腸腰筋
体勢・姿勢をキープする。
筋連結で、深層外旋六筋(後述)とつながる。
・縫工筋
膝を持ち上げて股関節を開くときに使う(パッセなど)。
この大きい筋肉たちは、体を支えてバランスをとるのに大切な筋肉です。
でも、これらをメインに使ってターンアウトしようとすると、お尻がガチッと固まってしまいます。パワーは欲しいんだけど、あまり縮めずに使わないと可動域が狭くなっちゃうんですね。
そのままだと動くときに体を支えられないので、足を上げるとターンアウトできなくなってしまいます。あと、お尻が疲れてこったり、腰痛になったり、下半身太くなったりします^^;
なので、バレエ教室だと「お尻の奥の筋肉使ってターンアウトして!」というアドバイスをされた経験ありませんか?
それは、股関節を回すときに奥にある小さい方の筋肉を使いたいからです。
股関節を開く小さい筋肉
股関節を開く筋肉で、奥にある小さいものは6つあります。
上から順に
①梨状筋(りじょうきん)
②上双子筋(じょうそうしきん)
③内閉鎖筋(ないへいさきん)
④下双子筋(かそうしきん)
⑤外閉鎖筋(がいへいさきん)
⑥大腿方形筋(だいたいほうけいきん)
という筋肉があります。
6つまとめて深層外旋六筋(しんそうがいせんろっきん)と言います。
これらは、ターンアウトをキープする筋肉です。
バレエ教室で解剖学に詳しい先生がいる場合は、「外旋六筋」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
名前は、踊る上ではあまり関係ありません^^;
…が、場所を覚えておくと、先生のアドバイスがどの辺の話をしているかのヒントになります。
例えば、
「お尻を締める」
「大転子(だいてんし・お尻の外にある出っ張り)をしまう」
「お尻の下(坐骨)を内側に回す」
…など、こんなアドバイス聞いたことありませんか?
これは、ターンアウトするときに深層外旋六筋を使うとできることです。自分で使えてるかチェックするときのポイントは、『どこに力が入っているか』です。
大腿方形筋は一番下を回す筋肉なので、お尻の下を回すときに使います。ここが使われているならお尻を締めるときにお尻に力は入らないはず。
もし、ターンアウトするときに、お尻の筋肉がガチガチに固まる、お尻がこる…なら、大きい筋肉に力が入って深層外旋六筋を使えていないケースが多いです。
このターンアウトをキープする筋肉を使いやすくするため、2番以降(3番、4番、5番)は、内転筋、背中の筋肉や、腹筋(横)、肩甲骨周りの筋肉など、体幹がブレないようにサポートしています。
まとめ
さていかがだったでしょうか?
バレエを踊っていてターンアウトは欠かせません。
でも、それは『見た目』や『ただ足が開いてるのがいい』というわけではなく、それが踊りに活かされるからなんです。
また、先生からいろいろアドバイスをいただいたときに、どこのことだかイメージしやすいように関節や筋肉についても少し触れておきました。
ぜひ、ターンアウトを使いこなして、バレエ上達に活かしてください^^