こんにちは。島田です。
今回は、拙著『バレエ筋肉ハンドブック』から、「内ももにある内転筋が踊りとどう関係するのか、と内転筋を鍛えるためのコツ」についてお話します。
目次
バレエで内転筋が大事な理由
内転筋は、脚を寄せる筋肉のグループです。
なぜここがバレエで大事なのか?
それは、中心からズレないようにしてくれるからです。
たとえば、ターンアウトするときに脚を寄せたり、脚をまっすぐ上げたり、体の軸をつくって片足でバランスをとるときに使われます。
内転筋が使えないと、足が外側に行ってしまったり、1番で膝がつかなかったり、4番や5番が苦しかったり、片足で立てません。
内転筋が強くならない2つの原因
まぁ、ここで改めて言われなくても「内ももの筋肉が大事」なことはもう耳にタコができるほど聞いてるかもしれません。トレーニング本もいっぱいありますしね。
でも、「内転筋鍛えてるのに内ももに感じがしない」「トレーニングしてるけど太ももが太くなってしまった」「足の付け根がいたくなる」というご相談を受けることがあります。
この理由は、内転筋(ないてんきん)の使われ方にあります。
①足をまっすぐ横に寄せようとしてる
②内転筋を1つの筋肉として使ってる
なぜ問題なのか、それぞれの対策と一緒にお話します。
内転筋だけではまっすぐ足は寄らない
1つ目の理由は、足をまっすぐ寄せようとしていることです。
「え?足寄せる筋肉なら、普通にココ使えば脚寄るんじゃないの?」って思うかもしれません。でも、内転筋だけ使って足を寄せても、太ももがまっすぐ横に動くわけではないんですね。
内転筋は、そのほとんどが恥骨から太ももの骨へ斜めについています。
なので、ここを使うと恥骨と太ももが近づくので、脚は斜めに寄ることになります。
仮に両方の足を横に寄せようとしても…膝はよるんだけど、太ももの上の方は寄りません。
内転筋のなかには股関節を内側に回す働きもあります(大内転筋、恥骨筋)。
なので、このままだと膝の近くは内転筋使えてても、上は股関節を内側に回して寄せる感じになります。
このとき、お尻を広げるように太ももの外側の部分(大転子・だいてんし※)が外に出っ張ってきます。
力任せに真横に寄せると、脚の付け根の前や、太ももの前や外側に余計な力が入って硬くなったり、太ももが太くなってしまうんですね。
内転筋は1つの筋肉じゃない
2つ目の理由は、内転筋を1つの筋肉として使っているからです。
基本的な動きは、足を寄せることですが、筋肉がくっつく場所によって、どの辺を引っ張って足を寄せるのか違います。
内転筋の別の作用
例えば、ほとんどの内転筋は足を前に上げる働きもありますし、股関節を内側に回したりするものや、足を後ろにあげる働きもあります。
これを1つの筋肉として使おうとすると、意識できない部分で違う動きをしてしまうし、使いたいところを使うことができません。
足の付け根を痛める原因にもなる
また、自分のコントロールできる範囲を超えて股関節を動かすと、壊れないようにブレーキをかける働きもあります。
なので無理すると、その筋肉に負担がかかりすぎて、足の付け根のあたり(ソ径部)に痛みがでたりすることもあるんですね。
内転筋使いやすくする2つのヒント
じゃあ、どうすれば内転筋を使いやすくできるのか?押さえておきたいポイントはこの2つです。
①腹筋とセットで足を寄せる
②ターンアウトしながら足を寄せる
順番にお話します。
対策1:内転筋使うなら腹筋とセットで
腹筋は骨盤についています。内転筋も骨盤(ほぼ恥骨)についています。
腹筋とセットで使うことで骨盤が安定して内転筋に力が入りやすくなるんですね。
「腹筋とセットってどうやって?腹筋に力入れるの?」って思うかもしれません。腹筋は強く息を吐くと使われます。例えば、強く息を吐きながら足を寄せるだけでも、内転筋の上の方も使いやすくなるので、足がまっすぐ寄せやすくなります。
またバレエでは、内転筋を使うプレパレーション(準備)として、2番ポジションで骨盤の上を閉じることで腹筋を使いやすくしてます。
2番を通って腹筋を使いやすくしてから脚を寄せることで、内転筋が使いやすくなるので、4番や5番ポジションがとりやすくなるようになってるんです。
対策2:さらにターンアウトをするとまっすぐ寄る
さらに股関節を回し(ターンアウト)ながら寄せることで、足がまっすぐ寄りやすくなって膝が付きやすくなります。
といっても、いきなり股関節を外回ししようとすると、太ももの外側やお尻の上の筋肉の方が使われやすいので、はじめのうちは、股関節を回す感覚を身につけるために、一度内回ししてからやるのがポイントです。
股関節を内側に回すことで、先ほどお話した内転筋の上が使われます。
ここから股関節を外回ししていくと、内ももの上が使いやすい状態で足を寄せやすいんですね。
言葉で説明すると難しそうですが、やり方はシンプルです。
足を肩幅に開いてつま先を前にして立ったら、脚の付け根〜つま先まで全体を内側に向けて、踵で床を擦りながら合わせるようにすると、脚がまっすぐのまま寄りやすいので膝もつきやすくなります。
1番や6番で膝がつくのも同じ原理
1番や6番ポジションでスキ間なく脚がつくのはこの原理を自然とやってるからです。
腹筋たちが働いて骨盤がズレないようにしてくれてることで、内転筋も使いやすいし、股関節も回しやすい。
この状態でターンアウトしながら脚を寄せることで、膝がぴったりとつきやすくなります。
4番や5番ポジションで足をクロスするのも内転筋の仕組みを利用してる
また、4番や5番で足をクロスして寄せる場合も、なんとなく足をクロスさせてるんじゃなくて、内転筋を使うと脚が斜めによる仕組みを利用しています。
この場合も、腹筋で骨盤を支えて、ターンアウトを切らなさないことでより入りやすくなります。
内転筋をトレーニングするときのちょっとしたコツ
さぁ、ここまでの話で、
①内転筋は腹筋とセットで使う
②股関節を回しながらの方がまっすぐ足が寄る
という対策をお話してきました。
では、それらを踏まえて、改めて内転筋を鍛えるときにどこを意識すればいいか、コツをお話します。
内転筋を上中下3つに分けて鍛える
それは、上、中、下と3つに分けて寄せることです。
内転筋が鍛えられないというほとんどのケースで、トレーニングするときに膝に近いところだけ寄せて内転筋を使おうとしています。
なので、
(上)足の付け根に近いところを寄せる
(中)太ももの真ん中あたりを寄せる
(下)膝に近いところを寄せる
ようにすることで、内転筋をまんべんなく鍛えやすくなります。
内転筋のトレーニングをやってみる
内転筋のトレーニング自体は、ボールを挟むものでも、横に寝た状態で下側にある足を持ち上げる運動でもしっくりくるものならなんでもOKです。
ここでは、例として、横に寝た状態で足を上げる『アダクション』というトレーニングをご紹介します。
①平らなところに横向きに寝ます
②頬杖する感じで顔を支える
③上の脚を4の字に曲げる
④空いてる手で4の字にした足の足首をもつ
⑤下側の足を伸ばしたまま上に上げます。
この足を上げるときに
・足首をフレックスして行う→股関節使いやすい、膝が伸びやすい
・寄せ方を分ける
(上)足の付け根を、反対の骨盤に近づけるように上げる
(中)太ももの真ん中を、反対の脇腹に近づけるように上げる
(下)膝の近くを、反対の脇腹に近づけるように上げる
(全体)上の脇腹と下の内転筋を近づけるように上げる
と効果を得やすいです。
体の仕組みを知ってもっと踊りを楽しみませんか?
一生懸命に、がむしゃらに頑張る。
大人からバレエをされている方は、特に頑張り屋さんが多いので、「とにかく数をやろう」とか「とにかくこのトレーニングしてみよう」となる傾向があります。
その姿勢は素晴らしいですが、時に無理な使い方をして体を痛めてしまうケースも。
今回は、よくご相談を受けていた「内転筋が鍛えられない」原因とその対策についてお話してきましたが、本当にちょっとした認識の違いで効果は全然違ってきます。
ぜひ、ご活用ください。
最後に、本書『バレエ筋肉ハンドブック』の冒頭に載せたメッセージで締めくくりたいと思います。
その練習がどの筋肉に効いていて、なんのためにやっているのか、イメージできるようになることで、同じレッスンでもその効果は変わってきます。
特に、レッスン時間や体力を考える と、回数で勝負するわけにはいかない大人バレリーナさんには、 自分の” できる” を増やすヒントになるはずです。
出典『バレエ筋肉ハンドブック』